家の明かりとケンタロウ本がリンクしたら、ドラマになる。

夜のウォーキング中、ある場所に来ると、必ずすることがあります。

それは妄想です。
夜になると、家の明かりが外に漏れています。
私はその明かりを見ると、脳内で「あの部屋の人は、今、何をしているのかな」と妄想が始まるのです。
 

集合住宅

どの建物を見ても妄想するわけではありません。
つい妄想してしまう建物と、特に何も感じない建物があります。
その違いは、建物の雰囲気と明かりの漏れ方です。
妄想にピッタリな建物は、なんと言っても集合住宅です。
明かりがついている部屋と真っ暗な部屋がまだらになっている建物を見ると、ウズウズします。

「あそこの部屋はさっき帰ってきたのかな」
「隣の部屋は、帰りに立ち寄った本屋さんで見つけたミステリー小説を読み始めてる」
「その上の部屋は、今ちょうどサッカーやってるから、きっと見てるだろうな」
など、歩きながら妄想するのです。

ちょうどいい生活感

下の画像が、「あそこの人は何をしてるかな」と妄想せずにはいられないアパートです。
 
窓
 
窓の大きさといい、漏れる明かりの色と明るさといい、ドンピシャで好みです。
「明かりがついている部屋と真っ暗な部屋がある」は外せません。
全部の部屋が明るいと、ショールームっぽく感じてしまうのです。
適度な生活感が萌えポイントです。
部屋が明るすぎても、ダメです。

どのケンタロウ本の、どの料理

最近は、「何を作っているか」という設定にハマってます。
もちろん、料理のことです。
自分の好きな設定を自由に、しかも一瞬で変えることができるのが妄想のいいところです。

20代後半の独身男性は、今から料理をし始めるところです。
手元には数冊のレシピ本。
どれもケンタロウ本です。
帰りにスーパーで買ってきた食材と冷蔵庫にあるものを確認しながら、何を作ろうか考えています。
どうやらパスタにするようです。

「ケンタロウの121レシピ なんでもありッ!」(学研)から選んだのは「玉ねぎアンチョビのフェデリーニ」です。
「フェデリーニじゃないけど、ま、いいか」
彼のお気に入りのパスタはディ・チェコです。
パスタを茹でている間に、2品目に取り掛かります。

 

同時多発的妄想

同じ部屋で展開するのもいいですが、複数の部屋を同時多発的に妄想すると、一気に面白くなります。

上の部屋の人も、ケンタロウファンです。
現実では、上下の部屋でどちらもケンタロウファンというのは確率的にはかなり低いですが、妄想ではすべてがフリーダムです。

普段は料理をしたりしなかったりの30代前半の女性は、明日は休みだというのでカレーを作っています。
見ている本は「小林カレー」(幻冬舎)です。
 

かなり読み込んでいるようで、折り目と付箋だらけです。
ちょうどココナッツ缶があったので、「鶏肉と厚揚げのタイ風カレー」にしたようです。
彼女のお気に入りメニューです。
その理由は、あっという間にできるからです。
何度も作っているということもあって、ページは開いていても、まったく見ていません。
体が材料も手順も覚えているのです。
本代の元も取れて、お釣りがくるくらいすっかり自分のものにしています。

さらに、その隣の部屋は…
始まった妄想は止まりません。

あのケンタロウ本に妄想の台本があった

「ケンタロウのフライパンひとつでうれしい一週間!」(講談社)を読んでいて、あるページで手が止まりました。

曜日ごとのエッセイです。
月曜から日曜までの日常を振り返りながら、「こんな日はこんなメニューでいこう」というのがケンタロウさんの目線で書かれてあります。

この7つのエッセイが、妄想の台本にピッタリなのです。
「妄想用にご自由にお使いください」と言われているようです。
 

月曜日

(7ページより一部引用)

月曜日はどうしてこんなに長いんだろう。
日曜日はあんなに短いのに。
なんて考えているうちに、なんとか仕事終了のメドもたってきた。
こんな日はダッシュで帰って、ダッシュで作って、ごはんを食べよう。
そうだ。
昨日買ってまだ聴いていないCDを開けて、1枚聴くあいだに作って食べおわっちゃうことにしよう。
日曜日の余韻のまま、月曜日はおわりにしよう。
そう考えれば月曜日もわるくないな。

火曜日

(21ページより一部引用)

まだまだ1週間は長い。
仕事でちょっとイヤな思いもした。
こんな日はバシッとカレーでいこうか。
シャワーを浴びるころにはマイルス・デイビスを口ずさむくらいにはなってるね。

水曜日

(33ページより一部引用)

今日はごはんが食べたいな。
白いごはんにおかず。
そういうタダシイ組み合わせでいきたい。
帰ったら米をといで早炊きにセット。
そのあいだに友だちに電話して、炊ける10分前に切る。
それからガガッといかすおかずを作って、いただきます。
これでいこう。

木曜日

(45ページより引用)

あと1日働けば休み。
そう思うと気持ちに余裕も出てくるってもんだ。
こんな日は帰ってじっくり揚げ物でもしよう。
お気に入りのCDの中でさらにお気に入りの曲を何度も何度もかけて、じっくり余裕の揚げ物ライフ。
仕事上のイヤなことも、人間関係のめんどくさいことも、この際だからまとめて全部揚げちゃって、はしからパリパリ食べたろーか。
木曜日はちょっと余裕。
そんな時は揚げ物に限る。

金曜日

(57ページより一部引用)

1週間おつかれさまでした!
明日は休み!
あさっても休み!
金曜日は好きな人とごはんを食べよう。
1週間のすべてはそのためにある。

土曜日

(73ページより一部引用)

土曜日は朝寝坊。
これ常識。
なので本日最初の食事は当然「ブランチ」というわけです。
ま、ブランチのつもりだったのが、起きたら思わずランチ+デイナーの時間帯になってたりしたって、気にしない気にしない。
だって今日は土曜日。
今日1日休みな上に明日だってお休み。
思う存分ボォーッとしたら、シャワーを浴びて始めよう。
土曜日は朝寝坊。

日曜日

(85ページより引用)

日曜日はちょっとせつない。
だって今日でもう休みは終わり。
1週間は長いのに、休みは一瞬。
つらい時間は長くても楽しい時間はアッという間。
こんな日はいかす時間を惜しんで、敬意をはらって、ごちそうにしよう。
ごちそうしかない。
近所でいちばん大きなスーパーまで買い出しにいって、いつもよりすこおし手間をかけて作る。
ふたりでも大勢でも、みんなで日曜日にありがとうを言って、大盛り上がりで見送ろう。
日曜日はごちそう。
明日もまたはりきっていこう。

1人で1週間分 / 7人分の1日

この7つのエッセイは、2通りの読み方ができます。

①1人で1週間分
1人の月曜〜日曜までのストーリーです。

②7人分の1日
7人それぞれの1日だけを切り取ったストーリーです。

どちらも面白くて、妄想のしがいがあります。
設定も絞り過ぎていない分、いくらでも拡大・縮小できて、誰にでも感情移入しやいところがいいです。

1人のストーリーなら、この人は、かなり音楽が好きな人です。
CDが2回出てきて、火曜日にはマイルス・デイビスが登場します。
マイルス・デイビスは、ジャズのトランペット奏者です。
 


 
平日は仕事で、その仕事もいろいろトラブルがあったり、楽じゃないというのも伝わってきます。
「仕事」の部分を、学校など他のことに置き換えれば、誰にでも当てはまります。
7人分のストーリーの設定なら、7倍以上の広がりが出てきます。
まさに妄想のための設定です。
ニヤニヤが止まりません。

夜のウォーキングの楽しみが、また増えました。