ケンタロウさんのエッセイは、ヨイショもしないけど、切り捨てることもしない。

「家族でごはん」のエッセイを何度も読み直しています。

家族でごはん

 

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ケンタロウさんのエッセイは、理想論だけを書くことはしません。
理想論は書きやすくて、書きながら気分も高まってきます。
だんだんと書く自分に酔ってきて演説になってしまいがちです。

ケンタロウさんは理想を見ながらも、ちゃんと足元の現実も書いています。
たとえば、「家族でごはん」の中では、

「言うつもりは全然まったくない」
「何より大事とはとても言えない」
「人生甘くない」
「会話が弾むばかりじゃない」

というように否定する文章も入っています。

このエッセイに限らず、否定文をよく使うのも、ケンタロウさんの書き方の特徴です。
あえて否定文を使うことで、「あ、そうだよね」とグッと引き込まれるのです。
「人生甘くない」と言われるとドキッとしますが、逆にそれがスパイスになって、エッセイ全体を引き締めてくれています。

現実の中に幸せがある

「人生甘くない」は誰もがなんとなく感じていますが、それを見ようとはしません。
誰もが感じている現実をあえて書いてくれることで、現実の中のちょっとした明るさや温かさを見つけることもできます。
ケンタロウさんは、大きな理想の中に幸せがあるのではなく、現実のちょっとしたことが、実は幸せなんだと教えてくれているのです。