【ケンタロウさん】魚料理をしながら、世界を思う。

『ケンタロウ「魚!」ムズカシイことぬき!』(講談社)で、ケンタロウさんは仲良しを願っています。

「その5 野菜と仲良しメニュー」のエッセイには、こうあります。

海育ちの魚と山育ちの野菜だけれど、仲良くなっておいしくなる
海か山、どっちの出身かなんて関係なく、仲良し
人間もそうなれればいいのになと思う

料理で使う食材の話から、人間社会や世界の話になっています。
これがケンタロウ本の深さです。
 

平和だからこそ料理ができる

『ケンタロウ「魚!」ムズカシイことぬき!』は、魚料理の作り方の本です。
人間関係の話を料理本でする必要はありません。
人間関係と料理がおいしく作れるかは、直接は関係ありません。
でも、まったく関係ないとも言えません。
むしろ、大事なことです。
平和でないと、料理どころではないからです。
今、私たちが何かおいしいものが食べたいな、夜は何を食べようかな、おいしく作れるかなと思えるのは、気持ちに余裕があるからです。
つまり、平和なのです。

ケンタロウさんは、食材を人間に見立てて、世界平和を願っています。
出身、所属、性別、言語、文化、思想、いずれも関係なく、みんな平等で、みんなニコニコで、みんな仲良しが一番です。
決して理想論ではありません。
切羽詰まった状況ではないにしろ、平和でなくなれば、途端においしいものを食べることはできなくなってしまいます。
安全な食べ物すら手に入らなくなることだってあり得るのです。
死活問題です。

おいしいと思えるのは平和だから

母カツ代さんは、何よりも平和が大切と力強く書いています。

「食」を支えているのは、平和
平和あってこその楽しい食事

出典いただきます ごちそうさま
合同出版(2008年)

食べ物と戦争はこれほど深くかかわるものはない
こんなにおいしく食べられるのは平和だから
子供がすくすくと成長し、戦場ではなく平和の中で生き続けていけるよう心していくのは大人の責任

出典愛は食卓からはじまる
海竜社(1992年)

料理がおいしいなんて思えるのは平和だからこそ

出典たべる、たいせつブック
コープ出版(2001年)

平和がベース

「おいしければそれでいい」は、「自分さえよければそれでいい」につながります。
それはただの傲慢です。
ベースあっての、「おいしい」です。
今食べたものがおいしいと感じるのは、おいしいと感じることができる環境があるからです。
当たり前のことですが、当たり前ではなく、実はすごいことです。
奇跡のようなことです。
そこに気づけるかどうかです。
ケンタロウさんの「そうなれればいいのにな」には、いろんな意味が込められているのです。
 

今できること字の向こう側にあるメッセージに、気づこう。