ケンタロウさんは、料理が得意なポエマーだった。

「ケンタロウのいえ中華」(講談社)のまえがきも、一気に引き込まれます。

初めて行くよそのお家に入った途端に、パーティーが始まる感じです。
普通、まえがきは「この本はこんな内容です」と淡々と書かれていますが、「いえ中華」ではポエムです。
サラッとおとなしい感じではなく、やたらとテンションの高いポエムです。
ギャップが激しいポエムと言ってもいいです。

ギャップが激しいといえば、マンションポエムです。
分譲マンションの折り込みチラシのキャッチコピーが、まるでポエムのようになっていて、それを詳しく分析している人がいます。

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本来は、マンションをアピールする広告なのに、キャッチコピーが目立ちすぎていて、結局なんのことを言ってるのかわからないのもあります。
マンションのすぐ近くに公園があるだけで、「まるで、楽園。」と言われたら、「集合住宅なのに楽園は言い過ぎだろ」と思ってしまいます。
もう単なるキャッチコピーを超えて、マンションポエムという一つのジャンルです。
堂々と浮いていいのです。

「いえ中華」のまえがきも、まだ入口なのに、すでにテンションが高いです。

たとえば、
「京劇なんてまともに観たことないし、漢文も読めないし、習字も苦手で太極拳もできないけれど、でも俺は中華料理大好き」
とあります。
京劇も、漢文も、習字も、太極拳も、中華料理とはまったく関係ないのに、「俺は大好き」と言われると、イコールで繋がってる気がしてしまいます。
勢いで押される感覚です。
錯覚してしまうのです。
もうこの段階で、ケンタロウさんのペースにハマってます。

次に
「中国4000年にはちょっと足りない人生30年」
と続けます。
4000に対しての30はちょっとどころではないのですが、ケンタロウさんが言うのだから「まあ、3970年は誤差の範囲内か」と思ってしまいます。

まだまだ続きます。
「広い中国には、芝麻醬とかXO醬があるけど、うちは2LDKだし、毎日中華でもないからそんなのは使わない」
今度は「広い中国」と「うちは2LDK」の広さ論法です。
もう完全に麻痺しています。
「うんうん、そうだよね」と納得してしまうのです。
マルチ商法なら、このあたりで書類にサインさせるところです。

最後に
「みりんは広い中国にはなくても2LDKの東京のマンションにはある」
と畳み掛けます。
完全に相手の思うツボです。
カモです。

よくよく読めば、「家で簡単に作れる中華料理の本」なのに、太極拳や2LDKは関係ありません。
比較対象としてもおかしいです。
でも、終始高いテンションに圧倒されっぱなしなので、「関係ないやん」とツッコむ隙がないのです。
いい意味で、ノセられて、その気になるのです。
前に、料理ではその気になることが大事だと書きましたが、まえがきの段階でワクワク感で溢れています。
ケンタロウ本は、まだまえがきなのに、すでに楽しいのです。

今できることテンションに、巻き込まれよう。