ケンタロウさんがずっと気になってるスタッフドオリーブの作り方

出典:ケンタロウの「おいしい毎日」
(講談社+α文庫/2010年8月)

「オリーブの芯の謎解き」より

 

ケンタロウさんは、知りたくて知りたくてたまらないそうです。
私も、気にしたことがありませんでした。
この章を読んで初めて、「あ、言われてみれば」と思ったほどです。

ケンタロウさんが気になっているのは、オリーブの実に詰まっている赤いものです。
はっきりとは見たことがなくても、なんとなくうっすら「見たような気がする」人が多いかもしれません。
 

 

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オリーブの実の種をくり抜いて、詰め物をしたのを「スタッフドオリーブ」と言います。
この「スタッフ」は、職員を意味する「staff」ではなく、「詰め込む」の「stuffed」です。
 
スタッフドオリーブとは – コトバンク

どうやって詰めてるの?

ケンタロウさんは、オリーブが入った瓶の原材料ラベルを見て驚きました。
「オリーブの実の中に入ってるあの赤いやつってピーマンなの?」

「知らなかった、考えたこともなかった」とケンタロウさんは言います。
料理の仕事をする人ですら知らなかったのですから、そうでない人は関係者でもない限り、オリーブの実の中に入ってるものを考えることはありません。
そもそもオリーブの実はバクバク食べるものでもないので、めったに買いません。
人生で買った回数を数えたほうが早いくらいです。

ケンタロウさんが見たのは赤ピーマン(ピメント)でしたが、詰め物の種類はいろいろあります。
上の Instagram 画像では、アンチョビが詰められています。

ケンタロウさんがもっとも気になっているのは、その赤ピーマンを誰がどうやって詰めているのか、です。
「さすがに機械では無理だろうから、手作業だろうな」と推測しています。

ここから「ケンタロウの妄想劇場」が始まります。

もしかしたらスペインのどこかにピメント詰めの街があるかもしれない

街じゅうの誰もがなんらかのピメント詰めの仕事に携わっていて、ピメント詰めにまつわるドラマが日夜繰り広げられているに違いないと言うのです。

ピメント詰めの街に行こう

ケンタロウさんが出演していたNHK「きょうの料理」に、日本各地の名物料理を取材する「メシタビ」というシリーズ企画がありました。
ピメント詰めも、「スペインにピメント詰めの街はあるのか」のテーマで取材してほしいです。
ケンタロウさんの「え、そんなことになってるの?」と驚きの顔が想像できます。

実際にオリーブの実に詰めている作業を見ることができます(3分23秒〜)。
この動画では詰めてるのはにんにくですが、他の5種類の具材も紹介されてます。

ケンタロウさんの言った通り、やっぱり手作業でした。
そのあとの瓶詰め作業がまさかの「バサッ」とで、思わず苦笑いです。
ケンタロウさんも、きっとこう言います。

そんな雑な詰め方でいいのかよ

オリーブの実には思いも詰まってた

「あとがき」には、「まだ気になってる」とあります。
結局わかったのかどうかはわかりませんが、取材に行くと、間違いなくケンタロウさんの「僕もちょっとやらせてもらっていいですか」の展開になります。
きっと「これ面白い、思った以上にハマるなぁ」と言うのです。
でも、しばらくして「いや、でも毎日こればっかりもなぁ」とつぶやきます。
さらに「オリーブの実に詰めるだけの簡単なお仕事です」と書かれた地元の求人誌を見せてもらったケンタロウさんは、「これからはじっくり味わいます」と深く頭を下げるのです。

東京に戻ったケンタロウさんは、こう振り返ります。
「ピメント詰めの街はなかったけど、思った以上に手間がかかってて圧倒された。
地味な作業で辟易してるのかなと思ってたけど、みんなニコニコでエネルギッシュだった。
誰も気づいてくれないようなことでも、仕事に誇りを持っててカッコよかった。
自分の仕事の棚卸しにもなった」

どう作られてるかを知ってるのと知らないのとでは、味わい方も変わってきます。
ありがたみもわかります。
今度、瓶詰めのオリーブの実を買う時は、もしかするとこれは誰かが手で詰めたかもと思うようになります。
どう作られてるかを知らないままだと、「意外に高いな」と思うだけです。
でも、手作業で赤ピーマンを詰めてるのを知ってると、「この値段でも安いよな」と思えるのです。
この違いは大きいです。

番組の最後に、ケンタロウさんはこう言うのです。

瓶のラベルに、この人が詰めましたって書いてあげたい

今できること地味なことも、徹底しよう。