【ケンタロウさん】料理は、時間がかかったほうがいいこともある。

私は、カツ代さんの本が苦手です。

嫌いだからではありません。
すぐに泣いてしまうからです。

読み進めることができないくらいに号泣してしまうのが、「小林カツ代のおいしいがいちばん!」(大和書房)です。

 

カツ代さんが亡くなった後に出た再編集版で、レシピ付きのエッセイ本です。

最後の章の、たった一人でコーヒーを飲む話は、まとめに読めません。
思い出すだけでも、目に涙がたまります。
カツ代さんが、夜遅くのようやくリラックスできる時間帯にコーヒーを飲みながら考えごとをするのです。
子供たちの成長ぶりを振り返るところで、ケンタロウさんのことが出てきます。
もうこの段階でダメです。
ケンタロウさんが中学生になり、ちょっと難しい年齢になって、ちょっと不安になることもあるそうです。
いつものカツ代さんの明るさがなく、なんとなくトーンが暗めな文章です。

「一人の時間を持つのは、いずれくる子供たちの別れに備えて」
「子供たちは、遠からず飛び立つ。愛する人ができる。悔しいけど淋しい」

後付けですが、カツ代さんは本当に子供たちと別れてしまいました。
もちろん、書いてる段階では、そんなことを知る由はありません。
自分の最後を悟っているかのような文章で、読みながら涙が止まりません。

直後の「ミートローフ」の写真には、こう添えられています。

「忙しくて子供たちとゆっくり話せなかった時は、よくオーブン料理を作りました。喜ぶ顔が見たくて、出来上がりを待っている時間が好き」

できることなら、もうずっと出来上がらないでくれ、と願いたいほどです。
出来上がってしまったら、もう会えなくなってしまうからです。
出来上がってほしいけど、出来上がってほしくないのです。
神様は、時に残酷です。
オーブンの焼き上がり時間の、あと20分が、20年ならよかったです。
それならずっと話ができます。
ずっと笑っていられます。
何度でもオーブンのタイマーを元に戻したいくらいです。

この本を電車の中で読まなくて、本当によかったです。
この本のジャンルは、料理本です。
ミートローフの写真を見て大泣きしていたら、かなり危ない人です。
感情移入しやすい人は、読む場所に気をつけてください。

そのカツ代さんが、コーヒーを飲みながら聞いていたのがラベルのボレロです。
私もCDを持っています。
名前を知らなくても、映画やCMでもよく使われる有名な曲です。
ケンタロウさんにとっても思い出深い曲かもしれません。

演奏するオーケストラや指揮者によって曲の表情が変わるのも、クラシックの面白さです。
指揮小澤征爾
ボストン交響楽団

指揮:ダニエル・バレンボイム
パリ管弦楽団

指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団