【ケンタロウさん】食べたいから、また作る。

出典:ku:nel クウネル
マガジンハウス
vol.34(2008年11月号)

「ケンタロウが語る「俺んちの味」。小林家のあたりまえ。」より

この号には、ケンタロウさんの料理に対する考え方がいくつも出てきます。
哲学です。

ケンタロウさんは「好きなものはずっと好き。変わらないのがうれしい」と言います。
ずっとケンタロウさんの本を見ていると、当たり前ですが、ケンタロウさんの好きな味しか出てきません。
いろんな食材を使って、いろんなバリエーションのメニューが出てきますが、どれもケンタロウさんの好きな味です。
実は、ここに大事なポイントがあります。

数十冊のケンタロウ本が出ていますが、結局は1冊です。
ケンタロウさんの好きな味の本なのです。
便宜上、数十冊に分けているだけです。

ケンタロウ本を通して読むと、ブレてないのがわかります。
売れっ子になると、「あれ? なんか路線が変わったな」がよくあります。
売れてくると、もっと売りたいからと、どんどん「その他大勢」に合わせてしまうのです。
ケンタロウさんは、ずっと自分の食べたい味を追い求めています。
一点集中です。
それを知っている読者は、安心して新刊を買うことができるのです。

ケンタロウさんにとって、家の味がすべてのベースになっています。
「家の味を乗り越えたいと思ったことはない」とケンタロウさんは言います。
乗り越えるというのは、ある意味、育ってきた家の味を否定することになってしまいます。
ベースは、乗り越える対象ではないのです。
そのままでいいのです。
ケンタロウさんがやっていることは、家の味の熟成です。
毎日毎日、秘伝のタレを熟成させるように、家の味を守っているのです。

「好き」が一番強い

「新しい味がなくても、今知っている味で十分」とも言っています。
ケンタロウさんは、ずっとそれを貫いています。
ケンタロウさんの料理で、見たことのないようなレシピは1つも出てきません。
ケンタロウさんは、斬新なレシピには興味がありません。
好みのストライクゾーンはかなり狭いです。
だからこそ、ケンタロウさんなのです。
そうあってこその、ケンタロウさんです。
「あれもこれもやります」では、軸がブレブレになります。
「結局、なんの人ですか?」と思われてしまいます。
「これしかできません」が、ブランドです。
ブランドとしての「ケンタロウ」です。
自分の「好き」が、結局、一番強いのです。

今できること好きなことを、徹底的にやろう。