ケンタロウ本「ドカンと、うまいつまみ」には、チーズの匂いと笑い声がある。

「ドカンと、うまいつまみ」(文化出版局)の「はじめに」が好きです。
映画化できそうなくらいに臨場感たっぷりで、一気に引き込まれます。
まえがきのままにしておくのはもったいないです。


「僕はそんなにお酒を飲むわけでもない」と軽い自己紹介から始まります。
つまみは料理とは違った楽しみがあって、買ってきたやつじゃなく、自分が作ったものだと余計に盛り上がるよねと、自己アピールをするのです。

ケンタロウさんちの飲み会

ここで、場面転換です。
もうそこは、ケンタロウさんの家です。
もうすぐ大好きなお友達がやってきて、にぎやかな飲み会が始まるのです。
集合時間の20分前に帰ってきたケンタロウさんは、すぐに料理の準備に取り掛かります。
まずは、ピクルスからです。
お、どうやらお友達が集まってきたようです。
早くも笑い声が聞こえてきます。
ケンタロウさんの大好きなビール「Rolling Rock」で乾杯です。
 

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We obsess over originality. We choose to follow paths few dare explore. We seek to discover expressions of self that reveal the independent spirit in all of us. We are Rolling Rock, and that’s just #HowWeRoll.


 

 

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ササッとチーズせんべいを作り、その次はかき揚げです。
だんだん笑い声のトーンが上がってきました。
ワインを開け、チーズも切って、くだらない話で盛り上がるのです。
シメは、ねこまんまです。
かつ節ご飯でいいのに、わざわざねこまんまとするところが、さすがです。
コーヒーまで飲んで、みんなを見送ったのは深夜でした。

まえがきなのに、すでに楽しい

何時集合で、何時まで盛り上がったのかは書かれてありません。
2時間だったかもしれませんし、5時間半かもしれません。
本当に楽しい会だったというのがありありと伝わって、自分もそこに招待されていたかのような気分になるのです。
まだまえがきです。
レシピも出てきません。
目次の手前です。
文字だけで、写真すらありません。
なのに、すでに楽しいのです。
すでに盛り上がってるのです。
チーズの焦げたいい匂いもしたし、お皿やグラスが触れ合うカチャカチャした音も聞こえるのです。
小説ではなく、料理本の、しかもまえがきです。
本屋さんでこのまえがきを立ち読みした人は、きっとレジへ直行します。
それほどの面白さです。

その日作ったメニューが、この本に載っています。
チーズせんべいもねこまんまも、再現できるのです。
まえがきだけで、1500円の価値があります。
レシピはおまけのようなものです。
1500円は、本代ではなく、会費なのです。
1500円で、これだけ楽しめたら、安いです。
「これだけ笑ってコーヒーまで出て、ほんとに1500円でいいんですか?」と聞いてしまいます。

ケンタロウ本の6つのポイント

ケンタロウさんは、おいしくて豊かな時間を過ごすために6つのことを挙げてくれています。

・ほんのちょっとの手間
・ささっと作る要領
・じっくり楽しむ余裕
・いかす音楽
・くだらない話題

そして最後に
・この本

ちゃんとアピールするところが、憎いです。
実は、これらのことは、どのケンタロウ本にも共通するポイントです。
気合いやテクニックではなく、ちょっとしたことで楽しくなるというのを教えてくれているのです。

「まえがき」の余韻

書かれてありませんが、お友達が帰った後も、きっとケンタロウさんはニコニコしています。
玄関から部屋に戻ると、人数分の生暖かい空気と匂いが残っていて、余韻を感じます。
さっきまであった明るい笑い声もなく、一人になるとさすがに静かです。
寂しさを紛らすためにCDのボリュームをちょっと上げて、片付けを始めるのです。
少しだけ残ったつまみを食べながら、たまに思い出し笑いもしながら洗い物をします。
仲間とワイワイ盛り上がる時間も楽しいですが、一人だからこそ味わえる時間もたまらなく好きなのです。
たくさん笑ってくれた仲間の顔を思い浮かべながら、「今度はこんなのを作ってみよう」とアイデアが出てきます。
さっき帰ったばかりなのに、もう次の飲み会が始まっているのです。

今できること寝る前に、思い出し笑いしよう。