【ケンタロウさん】ほうじ茶が冷めたら、19年経っていた。

「小林カツ代の手料理上手の暮しメモ」に、19歳のケンタロウさんの話が載っています。

 
出典:小林カツ代の手料理上手の暮しメモ
知的生きかた文庫
発売日:1996年5月

「浦島太郎」より
 

 

昨日は、ケンタロウさんとカツ代さんが深夜二時まで話し込んだという話でした。
「浦島太郎」では、さらに時間の流れが大きくなります。

人生も、子育ても同じ

ケンタロウさんが大学生の頃(19歳)の話です。
ある日、当時付き合ってた彼女から電話がかかってきました。
ところが、ケンタロウさんはレストランのアルバイトに行ってて、まだ帰ってません。
もちろん、スマホはまだない時代です。
留守なら伝言をお願いする「ザ・昭和スタイル」です。

後ほどケンタロウさんが帰宅し、バイト先でいいことがあったらしく、

今日、すっごく面白いことがあったんだ

と言います。

カツ代さんがちょうどお茶を入れているタイミングでした。
ケンタロウさんにも入れてあげて、「何があったの?」と聞こうとした時に、Tちゃんから電話があったことを思い出します。

Tちゃんが電話ほしいって

それを聞いたケンタロウさんは、子機を持ってそそくさと自分の部屋に入って行きます。
言おうとしてた「面白いこと」と熱いほうじ茶だけが、そこに置き去りになってしまいました。
 
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さて

カツ代さんは、そこから読書タイムです。
カツ代さんは本が大好きです。

時計を見ると、すでに1時間以上が経っていました。
「あっという間」という表現がぴったりなくらいに、時間が過ぎていたのです。

ふとケンタロウさんのことを思い始めます。
あんなにちっちゃかった赤ちゃんが、あんなにデッカくなって、まるで時空を超えたかのような錯覚を覚えるのです。
「いずれ私の元から離れていく日も遠くない」とちょっぴり心の中にひんやりした空気が流れます。

この19年間、毎日小さなドラマの連続だったはずなのに、ほとんど記憶にありません。
それほど一瞬で通り過ぎていったのです。
断片的には覚えていても、19年もの歳月はかかりません

ケンタロウさんに入れてあげたほうじ茶は、すっかり冷めています。
湯気がなくなって冷めるまでに、19年経ってしまったかのようです。

浦島太郎の話、本当かもしれない
人生なんて竜宮城の夢のごとし

母のそんな感傷とは裏腹に、ケンタロウさんは、まだ電話中です。
親の心子知らず、です。

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