写真がなくても、ケンタロウさんが見える。

「ケンタロウのおいしいごはん 基本のABC」(講談社)には、ある特徴があります。


あれが、ない

いつもの、あの写真がないのです。
ケンタロウさんです。
この本には、ケンタロウさんの写真が1つもありません。
近年のケンタロウ本は、昔のに比べるとケンタロウさんが写ってる写真は少なめですが、ゼロの本はほとんどありません。
「ケンタロウのおいしいごはん 基本のABC」は、ある意味レアな本です。

ケンタロウさんのことですから、何かしらの意図があって自身の写真はいらないと判断したのでしょう。
調理過程の写真もゼロで、完成写真のみです。
ケンタロウさんは「料理写真は図鑑が理想」と言っているので、理想に近い本なのかもしれません。
 


 
ケンタロウさんが写ってる写真がないと、ケンタロウ本らしさを感じないという人もいるかもしれません。
でも、この本には、随所にケンタロウテイストが盛り込まれています。

・イラストとコラージュ
・手書きのノンブル
・エッセイ
・スタイリング

想像力を使って読む

確かにケンタロウさんの写真があれば、ケンタロウ度はアップしますが、なくても、十分に楽しめます。
ない方が、どういう表情で作っているんだろうと想像する楽しみもあります。
ケンタロウさんの写真はないですが、私には写真があるかのように見えています。
想像力を使って読めば、写真が1枚もなくても、まったく退屈しません。
写真がないからつまらないと言う人は、想像力がありません。
ないものをあるように楽しめるのが、想像力です。
想像力は超能力ではありませんが、パッとイメージできる人もいれば、できない人もいます。
人によって見え方も違ってきます。
AさんとBさんとでは、別の写真や表情を思い浮かべます。
想像力を使うことで、同じ本でも、自分だけの本になるのです。
想像しながら読むことに慣れてくると、映像で見ることもできます。
音や温度や匂いも感じるようになります。
ちょっと想像することで、1冊の本が何倍も楽しくなるのです。

料理の名前を聞いただけで「おいしそう」と言う人がいます。
目の前にはなんにもなくても、頭の中では、もう食べているのです。
口の中では、すでにその味が出来上がっています。
これが想像力です。

レシピ本を選ぶ時に2通りのタイプに分かれます。

①写真が少ないレシピ本を避ける人
②写真がないレシピ本でも読める人

写真や動画に慣れてしまうと、どうしてもそれに頼ってしまいます。
頼ることで、どんどん想像力は衰えていくのです。
想像力がなくても、レシピ本は読めます。
料理も作れます。
でも、想像しながら読むと、断然面白くなります。
写真がないレシピ本はつまらないと言う人は、読み方を間違っています。
写真がないレシピ本の楽しみ方は、人生の楽しみ方と似ています。
「時間がない」「お金がない」「才能がない」からと避けていると、ずっと食わず嫌いのままなのです。

ケンタロウ本のケンタロウ度

 

ケンタロウのおいしいごはんABC