【ケンタロウさん】無茶振りされると、創作魂が燃え上がる。

「よしっ、やってやろう」の気持ちが新たなメニューを生む原動力なのです。

あの超特大ハンバーグが食べたい

雑誌「主婦の友」(主婦の友社)のインタビューで、ケンタロウさんはこんなことを言っています。

ある夏、(草津へ向かう)移動途中で入ったレストランでハンバーグを注文すると、超特大のやつが出てきた。
世の中にこんな夢のようなものがあったのか!
心が震えるくらい感動したものだ。

東京に帰ってから、「あのハンバーグがまた食べたい」とねだると、カツ代は見事に再現してくれた。
そうそう、これこれ!
すごいなぁ。
母親が料理研究家でよかったと思うのは、まさにこういう時だ。
このほかにも、テレビを一緒に見ていて、「これ食べたいな!」とか言うと、必ず再現してくれたっけ。
きっと、自分のレパートリー以外のものを注文されると、創作意欲&挑戦意欲がムクムクと湧くのだろう。
自分も料理をするようになって、カツ代のそんな気持ちが今はよくわかる。

引用:主婦の友(主婦の友社)2006年1月号
連載「小林カツ代の思い出になる味」お正月スペシャルより

ヨッシャ、やってみよう

「マヨネーズってわっはっは」(生活情報センター)の中で、カツ代さんがこの企画を受けた経緯を書いています。

この仕事を引き受けるまでは、私は心の中で『様』と敬語を使いたくなるほどの尊敬の念はございませんでした。
マヨネーズの本を作りたいと企画をたてた女性は、どちらかというとうぐいすあんパンのような人で、一緒に来た出版社の社長は小倉あんパンのような人で、およそマヨネーズっぽくない人たちでした。
どっか、マヨネーズ会社がスポンサーになり、ガッポガッポとマヨを売り、大もうけをたくらんでいるかと思いきや、いやまったくそういうことではなくて、丸ごとマヨネーズの本を作りたいだけです。と、モゴモゴ、しかしはっきりと、言われ、「ヨッシャ、やってみよう!」という気になりました。
なんかひょっとして無限の可能性がマヨネーズにはひそんでいる気がしたのです。
未知の世界を開拓するのは大好きで、それによって、私も大きな発見が出来ればまた料理の幅が広がってもっけの幸いです。
マヨ様の原料は新鮮な卵、サラダ油、塩、酢といったシンプル極まりないもので、悪いものはなーんもない。
さあそう思ったとたん、頭の中は自分の発想に思考が追いつかないほどすごい勢いでピカピカ、ドコドコ、アレモコレモ、ピッピピッピと、次から次へとマヨ様は大活躍。
レシピが怒涛のごとく渦巻いてきました。

引用:マヨネーズってわっはっは(生活情報センター)
拝啓マヨネーズ様より


だから作ったよ

カツ代さんのように「ヨッシャ、やってみよう!」と言わないまでも、ケンタロウさんも同じようなことを言っています。

これからも必ず毎回トリンコの電話に応えられるとも限らないし、まして世の中の読者の方全員からの「いまうちの冷蔵庫には」という電話を受けるわけにもなかなかいかないよなぁと思っていたら、ある日トリンコが、「たとえば家にキャベツがあって『キャベツ』って引いたら、もうとにかくキャベツを使った料理が次から次へとばーっと出てる本があったらすぐ買うのに」と言った。
だから作ったよ。
「キャベツ」って引いたらキャベツを使った料理が次から次へとばーっと出てくる本を。

引用:ケンタロウ 1003レシピ(講談社)
はじめにより


母と同じ気持ちになった

断る理由がない限り、「こういうの作って」「あんなのが食べたい」とリクエストされるのはうれしいです。
いい意味で期待を裏切りたくなります。
相手の想像を上回りたいのです。
プロであれば、なおさらです。

ケンタロウさんは、母の気持ちがよくわかると言っています。
それはケンタロウさんも同じ気持ちになったということです。
「よしっ、やってやろう」がなかったら、あれだけの本やレシピは生まれていません。
無茶振りされて「そんなのムリ」と断るのは、二流以下の人です。
無茶なリクエストほど燃えるのが、一流の人なのです。