ケンタロウさんが肉が好きなのは、母カツ代さんのおかげだ。

もしカツ代さんが「私は肉なんて食べませんのよ」と言っていたら、料理家のケンタロウさんは存在してなかったかもしれません。

人類はなぜ肉食をやめられないのか

「人類はなぜ肉食をやめられないのか」(マルタ・ザラスカ/インターシフト)がめちゃくちゃ面白かったです。
「これはケンタロウさんに教えたい」という箇所がいくつもありました。

どれが優れた食べ物であるかについての教育は、母親の子宮にいるときから始まる。
妊婦が食べた物の風味が羊水にしみ出し、それを胎児が飲み込み味わう。
たとえば、ニンジンをたくさん食べた妊婦から生まれてきた赤ん坊は、妊娠中に母親がニンジンを好んで食べなかった赤ん坊よりも、ニンジン味のシリアルをより好むことが研究からわかっている。
その後もこうした食育は、母乳を通じて継続される。
こちらも同じような過程をたどる。
母親の食べた物が母乳に味をつけ、だいたいにおいてその味を子どもが好むようになっていく。
たとえばアニスの実をあまり好きでない人は、赤ん坊だった頃に母親がアニスの実を食べていなかった可能性がとても高い。
その後、離乳食の時期がくる。
ネズミなど雑食動物の赤ん坊と同じように、人間の赤ん坊は、大人たちが最も好んで食べている物の味をおぼえていく。
科学者たちに言わせれば、赤ん坊の食べ物の好みは「社会的に伝承される」のだ。

引用:158ページより
 

肉を欲する気持ちを補強するような遺伝子構造をもつ人もいるのかもしれない。
たとえばイギリスで双子を対象に行われた研究で、肉か魚を好む程度の78パーセントは受け継がれるものだとわかった。
つまり、両親が牛肉や豚肉を嫌いなら、子どももそれらを嫌いになる可能性が高いということだ。

引用:212ページより


とにかく肉が好き

「やっぱり肉が好き」(文化出版局)を出すくらいに、ケンタロウさんは肉が好きです。
好き過ぎるくらいです。

上の引用文だけを見ても、ケンタロウさんの肉好きはカツ代さんのおかげだというのがよくわかります。
もしカツ代さんが肉は食べない派なら、ケンタロウさんもそうだった可能性大です。
肉を食べないケンタロウさんは、ケンタロウさんではありません。
肉が出てこないケンタロウ本は、ケンタロウ本ではありません。
今となってはまったく想像できません。

ケンタロウさんはそれほど好き嫌いもありません。
それもカツ代さんがなんでも食べていたからです。
そのカツ代さんがなんでも食べるのは、やっぱりお母さんのおかげなのです。


「運命」と「選択」の科学

『「運命」と「選択」の科学 脳はどこまで自由意志を許しているのか?』(ハナー・クリッチロウ/日本実業出版社)にも、同じようなことが書かれてあります。

妊娠中の母親がニンニクやトウガラシなど揮発性物質が多く含まれる食品を食べると、そういったにおいや風味になじんだ新生児は、そのにおいの源に頭や口を向けようとすることがいくつもの実験によってわかっている。
(中略)
母乳で育てている母親がある特定の食べ物を摂り続けると、その情報は母乳から伝わる。
(中略)
妊娠中や授乳中の母親が健康的で変化に富んだ食生活をすれば、その環境によって赤ん坊は、その後、おそらく大人になるまでずっと、良質のさまざまな食べ物を好むよう刷り込まれる、ということだ。

引用:第3章 空腹な脳
94〜95ページより